#049 長い夏 2010.08.20.FRI
■所用があり、病院へ行ったのだった。
■冷房が効いた待合室で高校野球の中継なぞを眺めながらくつろいでいると、隣から4,5人の老人たちが談笑している声が耳に入ってくる。どうも常連のヒトビトらしく、毎日この病院の待合室に集まっては、愚痴を言い合ったり、各々のクスリの量を競ったりしているようである。雑談に花を咲かせる中で、フと一人の老人が言った。
「アレ?そういえば、今日はタチバナさんは?」
「ああ、あの人、夏風邪だって」
風邪で病院を欠席。さすが違ったものである。
■しかし東海大相模の一二三(ひふみ)投手、いいですね。トルネードでサイドスローで球威バツグンの球をビシビシとコースに投げ分ける。顔もいい。ただちょっと珍しい名前のおかげで、中継のアナウンサーが「巧みな一二三」だの「一二三、四連投」だのと事あるごとにイジってくるのがイライラする。上手いこと言うのがあんたの仕事なのか。そうじゃないだろう。そうじゃない。
■八月に入ってから少し体調を崩してしまっていた。起き上がることが辛い日が多く、この一週間ばかりはゴロゴロしてばかりいた。フトンの中で「文壇高円寺」というブログをずっと読んでいた。筆者が凄く身近に感じられる。何だか他人のような気がしないのである。古い友人と話しているような気分になる。本を買い、本を読み、本を売り、そして文章を書いて生活する。アルバイトもする。毎晩、酒を飲んで眠る。時々国内旅行に出掛ける。そして旅先でも本を買うのだ。私のような人間からすれば、一種の理想的な生活に思える。(勿論他人の気楽さで言うのだけれど)。でもきっと世間一般の人々の評価は違うのだろう。いわゆる、「いい年してブラブラしている人」というやつだ。アウトロー、と言えば格好良い気もするが、まあそんなにいい目では見てくれないだろう。
■ブラブラしながら生活する。この「ブラブラしながら」というのは「好きなことしながら」ということだ。その困難さ。やろうと思ったからといって、皆が出来るというモノではナイ。自分は世間から「ズレた」人間なのだと知りながら、でもその様にしか生きていけないから、そうする。いつも圧倒的な世間とのズレを感じながら日々を送っている私のような人間には、だから、その生活は憧れに映る。「活字と自活」も買ってしまった。荻原魚雷のファンになりそうである。
■連日、記録的な酷暑続きだったが、今日はストンと涼しくなった。しかし気温三十度というのがこれほど涼しく感じるとはなあ。毎年、夏は短いと感じるが、今年は違った。フトンの中でジっとしながら過ごす夏は、長かった。
小野寺邦彦
ラベル:
トウキョウ・エントロピー