#045 人間扱い 2010.08.05.THU
■先日、少しばかり病院のお世話になった。
■まあ貧血なので大したことは無いのだけれど、これまでは点滴で済んでいたものを今回は間に合わないので輸血をするという。僕の太い左手から血管を捜す作業は結構大変なようで、若い女性の看護士さん(僕より年下なのではないか)は何度も何度も針を刺し直す。申訳なさそうに「痛いですよね、ごめんなさい。・・・アレ?・・・ごめんなさい、痛いですよね・・・」と繰り返していた。確かに痛かったが、真面目にやっているのだし、怒る筋合いの事ではない。腹が立ったりはしなかった。ただ、痛いだけで。
■ただあまりに時間が掛かるので、見かねた先生が他の看護士さんを呼んで、代わりに針を刺すように命じた。交代したその人は恐らくベテランなのだろう。僕の腕を掴むと、ぐいっと一発で針をぶっ刺した。その思い切りのよさに僕はびっくりした。ほとんど感動さえした程だ。そして、どうして若い看護士さんが上手く針を刺せなかったのかが分ったのだ。
■彼女は、僕を人間扱いしていたのだ。腕に針を突き刺される僕に対して遠慮というか、配慮のようなものを持っていた。なるべく上手く、痛くないようにしなくちゃ・・・恐らくその思いが、皮肉にも思い切りの良さを殺してしまい、ビクビクと何度も何度も針を突き立てる結果になってしまったのだろう。それに対してベテラン看護士のあの思い切りのよさは、針を突き立てる相手が意思のある人間であるということなど、恐らく微塵も配慮していなかった。そこに突き刺す腕があるから、遠慮なく針を突き刺したに過ぎない。その瞬間、僕はまるで自分がモノのように扱われているように感じたが、しかし結果として、それが患者にとって最も苦痛のない方法なのである。なんせ針は一発で見事に刺さったのだから。それが、ベテラン看護士のスキルなのである。
■これは、どっちがいいとか悪いとかいうハナシではない。看護士さんを貶める意図も全くナイ。ただ、僕の顔色をチラチラと伺いながら、申訳なさそうに何度も針を刺し直した彼女も、いつかは無表情にぶすりと一発で針を通すようになるのだろうか。そんなことを考えながら、輸血に掛かる退屈な数時間を過ごしたのだった。
■どうも、お元気でしたか。8月です。おお、8月。なんと8月。結局7月は一度もブログを更新しなかった。いかんなあ。推敲日誌なのに。前回のエントリの最後に『来週からはまたすぐ次の推敲日誌が始まります。どうぞ宜しく』なんて書いたのにね・・・。始まらなかったね・・・。「モダン・ラヴァーズ・アドベンチャー」について、結局何も書けなかった。情宣の意味もあるブログなのに。春先はびっくりする程訪問者が多かったのに。すっかり忘れ去られて2ケタくらいの人しか訪れなくなってしまったようです。いけませんね。またしばらくリハビリのつもりで書いていきますので、宜しければちらっと見ていって下さいね。次の芝居のこともぼつぼつ書いていこうと思ってますので。
■そんなわけで「モダン・ラヴァーズ・アドベンチャー」は終わりました。相変わらず、多くの罵倒とホンのちょっぴりの賞賛を頂いた舞台でした。女優さんは皆はじめての方ばかりで、僕もイロイロ苦労したし、苦労をかけさせてしまいました。いつも以上に反省の多い現場でしたが、楽しかったです。お越し頂いた方、来れなかったけどちょっとは気にして頂いた方、どうもありがとう御座いました。お前なんか知るかアホ、という方、俺だってお前なんか知らねえよ、や~い。・・・毎日、暑いですね。お体、ご自愛下さいませね。では、きっと近いうちにまた。
小野寺邦彦
ラベル:
トウキョウ・エントロピー