#040 床屋の怪(そのⅡ) 2010.05.06.THU
■前回(そのⅠ)と銘打ってしまったことを後悔する程に、また随分と間が開いてしまったが、続きです。
■最強の散髪をカスタマイズするべく、券売機と対峙した私。まあしかし今日のところは様子見だ。無難に「カット・調髪」を選択すると、さらに!機械の野朗が「髪形を選べ」とデジタルにのたまう。選べる髪形は「短髪」「調髪」「スポーツ刈り」「パーマ」「アイロンパーマ」の全5種のみ!うん、床屋だ!この店に入って初めて安堵の溜息を洩らす私!迷わず短髪をチョイスした!すぐに散髪台に乗せられる!カットを担当してくれるのも、勿論女性だ。この店には、本格的に男はいないらしい。女性だけの理容室、というのはやはり奇妙だが、まあそれならそれで宜しい。存分に刈って貰おうか!鷹揚に構えた私である。だが、甘かった!
■妙なのだ。妙に体を押し付けてくるのだ。たかが後頭部をバリカンで刈り上げるために、理容師の胸部と客の背部とは、こうも密着しなければならないものなのだろうか?前髪を切り揃えようとする度に、ゴージャスグロスでコテコテに塗り固められたつやつやリップが眼前2ミリに接近する必要性は?このカット・フォームは日本理容協会で推奨されてるモノなんでしょうか?もう、ワケが分からない。でも、恐くて何も聞けません。聞いてしまえばその瞬間、妙にファンシーな奥のカーテンから、今にもパンチの男性がまろび出でるのではないかと思うと肝も冷え冷えです。
■しかし、まあ結論から云えば何も起こらなかった。カットのチケット代金1300円以上は一切請求されることもなく、私の髪の毛の総重量は70パーセントのコストカットに成功した!だとすればあの過剰なサービスは経営方針か。営業努力、ということなのか。少し余裕の出てきた私は、帰り際、ちょいと待合室を覗いてみた。すると、入店時には閑散としていたその場所に、いつの間にやら5,6人ものオッサンが座っているではないか!実は結構な人気店なのやも知れぬ。そういえば、入り口にあった貼り紙の『連日サービスタイムあります!』の文句が今はヤケに気にかかる。これから、その件のサービスタイムなのかい?教えておくれ、妙にソワソワしたおじさん達!
■未だ底を見せない謎の理髪店。その謎を解明するために、私はまたこの店に還ってくるだろう。それは偶然、サービスタイムかもしれない。そう、全ては廻り合わせなのだ。
完。(何が完だ)。
小野寺邦彦
ラベル:
未完成の系譜