#027 男と女 2009.9.30 WED


■ある日は残暑が厳しく、またある日はうすら寒い。今日は朝から雨が降っている。季節の変わり目だなあ。私は変わり目に弱い。少し体調を崩してしまった。崩れながらも台本を書く。書いては、消して、また書き直す。今回役者も変わったので、セリフをまたイチから考える。やっと調子が出てきたかな。それなりに苦しいが、稽古場は楽しい。

■ところで、私は街中や雑踏の中などでのヒトビトの何気ない会話に比較的耳が行く方で、断片的な会話を拾ってはあれこれ考えたりしたりして楽しんでいる。そういうことを日々行っていると、何といいますか、ある人が、面白いコトを言いそうな雰囲気、というのを察知できる瞬間があるのですね。地震が起こる1秒前に地震の気配を察知できる人がいるように、その人が「面白いことを言いそうな瞬間」が気配で分かったりする。(関係ないけど、私、目覚まし時計が鳴る0.5秒前に必ず目が覚めます)

■で、先日コンビニで立ち読みをしていた時。一組の若いカップルが私の隣に立って、やはりファッション誌を立ち読みし始めたのだった。女性のほうは比較的熱心に今秋のファッションや髪型などについて検討し、彼氏に意見を伺ったりしているのだが、その彼氏の方はというと、おざなり且つテキトーな受け答えで、「興味ねー早く行こうぜー」といった雰囲気丸出しである。そのまま5分程過ぎただろうか。女性の方がまた何か言いかけたその瞬間、件の「気配」がしたのである。あっ、この人は今、私にとってとても興味深い一言を発しようとしている‐瞬間的に耳を傾ける私。ところが!

女「エビちゃんにとってアネキャンの存在っていうのは、言ってみれば、」
男「ねえ~もうメシ食いにいかね?」
私(!)

女「そういえば、バナバボートのヘタの部分の利用法っていうのがあって、」
男「こないだタカハシがバイクでコケちゃってさ~」
私(!!)

女「見てよ~この髪型が許されるならさ、ニジマスの、」
男「あ、このモデル、昨日テレビで見たわ」
私(!!!)

■なんたることだろうか、この彼氏(ヤロウ)、大変興味深いハズの彼女の発言を、ことごとく潰しやがった。そのあまりの間の悪さ、無神経さに思わず顔を上げて、顔面を直視してしまったではないか。言いようのない怒りがこみ上げる。貴様にはこの娘の彼氏である資格はない!!あなた、ダメだこんな男と付き合っていては。今すぐ別れなさい!叫びましたね。脳内で。

■稽古はこれからが本番。良い作品にしよう。何といっても新宿だ。

小野寺邦彦