#018 100円の価値 2009.7.29 WED


■週末の日中。夏祭りの準備が進む駅前で、10歳前後だろうか、ハッピ姿の少年2人組とすれ違った。

■「俺たちも中学生になったら、神輿担ごうな」
 「でもあれすげえ重いって兄ちゃんが言ってたよ」
 「バカ。神輿担いだら、おでんと100円貰えるんだぜ」
 「え、マジで。100円?」
 「マジで。100円」
 「じゃあ担がなきゃやべーじゃん。損するじゃん」
 「な」

■例えば僕が10歳くらいの頃、100円とはどういう意味の金額だっただろう。そんなに価値のある金額だっただろうか。 そしてそれは中学生に与える「ご褒美」として成立する金額だったろうか。

■500円なら分かる気がする。500円貰えたら、きっと今だって嬉しい。神輿だって担ぐかもしれない。
でも100円である。
僕が小学生の頃。お年玉の総額が10万円を越えた、と言っていた同級生も居たものである。ジュースはかろうじて一缶100円であった。今は150円である。 物価は上がったけれど、子供の持つ金銭感覚がそんなに大きく変わるとは思えない。 きっと今10歳だったのなら、100円のために僕も神輿を担ぎたがるのだろう。
だからどうしたと言うわけではないのだけれど。

■そんなわけで10月の公演に向けて、気分を新たにしてみた。
名づけて「フロム/失踪者」。 公演タイトルも「NAVIの世界の失踪者~ト書きのヒトビト」と正式に決めた。 前回の成果と反省から、冒険的な趣向を凝らした舞台にしたいと思っているので、一つよろしくお願いします。

■梅雨明けは幻だったのか。豪雨と、湿気に喘ぐ7月の末。

小野寺邦彦